平成20年度 会長あいさつ
学問の進化に専門分化がつきものなのは仕方ないとしても,行過ぎた専門分化は,かえって学問の進化を阻害しかねません.地盤力学/工学も例外ではないと思っています.砂の力学と粘土の力学がバラバラで,動力学の専門家と静力学の専門家が別々どころの話ではありません.緩い砂の非排水応答専用モデルは,同じ緩い砂の締固めには無力であって当たり前,おまけに密な砂はまた別とか,圧密変形専用プログラムは地盤の支持力を計算できないし,あるいは液状化計算ができても締固め計算は無理などとなると,地盤力学は雑多な専用ツールの寄せ集めに過ぎないことになってしまいます.そうであるとすると,ある外力が地盤に作用したとき,壊れるか変形だけで済むか,液状化か締固めか,地震の後はどうなるか,つまりその地盤にはいったい何がどのように起こるのか,地盤力学は一貫して答える体系にはなっていないことになります.それでいいのか? GEOASIA研究会は,このような疑問から出発しました.
官と民の多くの方々のご支援のもとに,昨年8月末日に研究会の設立総会をもち,会の定款を決めてからちょうど一年目の,今年8月24日,第2回総会でようやく研究会の第一回目の活動報告が行なえることになりました.この間,多くの研究委託を通じて会の運営にご協力いただいた官と民の皆様,さらに研究委託等に答える形で,地盤の総合解析技術GEOASIAの発展に貢献された多くの会員地盤技術者の皆様には心から感謝いたします.
定款では,解析技術GEOASIAの不断の進歩とともに,会員諸氏の自己研鑽の支援も研究会の大きな目的に揚げています.今回,淺沼組技術研究所の高稲敏浩氏が,GEOASIA MASTERの認定第1号に選ばれましたことを喜んで報告致します.なお現在のところはまだ計算プログラムの運用は,名古屋大学内のGEOASIA研究推進センターに限られています.しかし,GEOASIA MASTERの増加を待って,公開の日も近いことを期待しています.
平成19年8月
名古屋大学大学院教授
一般社団法人GEOASIA研究会
会長 浅岡 顕