熱海盛土崩壊メカニズムに関する空気~水~土連成弾塑性有限変形解析

 令和3年7月に熱海市の逢初川源頭部で発生した盛土崩壊のメカニズムを明らかにするために,空気~水~土三相系のGEOASIAにより,盛土構築から崩壊までの一連過程の数値解析を行った.


 図1と図2はそれぞれ,盛土崩壊の数値解析におけるせん断ひずみ分布と含水比変化分布の経時変化を示す.含水比変化は崩壊の数値解析開始時からの変化量(吸水が正)である.

 図1のせん断ひずみ分布より,降雨開始から時間が経過するに従って,下部盛土の法尻付近から上方へと順にせん断ひずみが局所化する領域(以後「すべり」)が生じ,58時間経過時には下部盛土の最上部まですべりが生じている.  

 このとき図2の含水比変化分布より,下部盛土では地表面からの降雨浸透による吸水がほぼ生じていない一方で,渓流堆積物からの地下水流入による吸水が生じており,時間経過とともに上方へと吸水領域が広がっている.

 図1と図2の最下段は,58時間経過時の盛土のみを抽出かつ下部盛土部分を拡大したせん断ひずみ分布と含水比変化分布をそれぞれ示す.渓流堆積物からの地下水流入により,下部盛土は透水性が低いために底部のみで著しく吸水しており,一方で地表面付近まで到達しているすべり面ではほぼ吸水が生じていないことから,下部盛土底部の吸水によるせん断変形をきっかけとして,下部盛土全体のすべりが生じたことがわかる.

 図面は省略するが,すべり面上に位置する盛土底部の土要素では,高い盛土の構築による高応力比状態で地下水が流入して,間隙水圧の上昇によりサクションが低下して飽和度が100%となった後,最終的にはCam-clay modelの特徴である限界状態線q=Mp’上側で示す塑性体積膨張を伴う軟化挙動を呈して大きなせん断変形が生じた.

 ※図1と図2の動画を載せていますのでご覧ください。

図1せん断ひずみ分布の経時変化    図2 含水比変化分布の経時変化