2016年
河川堤防の浸透破壊メカニズムの解明
2012年の九州北部豪雨による矢部川堤防の被災は,越流なき浸透による破堤として大きな衝撃を与えた.このような浸透破壊メカニズム解明を目的とした解析を行った.解析断面は,高透水性層を低透水性層が被覆した地盤上に,盛土が構築された半断面である.計算は,右側から水位一定で浸透させた.その結果,浸透により,地盤の層境において平均有効応力がゼロに近づいてボイリングし,それをきっかけに盛土法尻部から滑り始めることを示した.

本震による不飽和土層の飽和化に起因した余震時液状化被害拡大メカニズムの解明
東日本大震災では千葉県内の埋立地において,本震の29分後に大きな余震が襲い,余震時に液状化被害が拡大したことが報告されている.これを念頭に,空気~水~土骨格(三相系)連成有限変形解析により,砂地盤(層厚20m,表面から2mが不飽和域)に地震動を入力した.動画は本震中,本震直後~余震直前および余震中の飽和度、平均骨格応力の状態をそれぞれ示す.本震時に地下水位が上昇し,高飽和度領域で平均骨格応力が低くなる.余震が起こると地下水位がさらに上昇して,これに伴い平均骨格応力がさらに低下,つまり液状化被害が拡大する.このような地震中・地震後の地下水位変動現象は,弾塑性構成式を搭載した三相系連成有限変形解析を用いれば表現可能である.
N値ゼロの軟弱層を有する地盤上の岸壁構造物の耐震性に対する2次元・3次元照査比較
N 値ゼロの軟弱な粘性土層と砂層を有する地盤上の岸壁構造物について, 2次元平面ひずみ条件および3次元解析でその耐震性を照査した.その結果, 軟弱な粘性土層および砂層は液状化し,2 次元解析では土留めの全塑性応 力を越える箇所が発生した.しかし,一方,3次元解析では,降伏曲げ応力 を越えることはなかった.3 次元解析では,y 軸方向(2 次元解析にとって 面外方向)への変形が可能なためであり,設計上の合理化に繋がることを示した